
〒329-2703
栃木県那須塩原市
槻沢442-1
2袋の食べもの
新鮮な野菜がぎっしり詰まった大きな袋が一つ。もう一つの袋には小麦粉、穀物、塩、砂糖、スパイスが詰まっている。ずっしりとしたその量があれば、1、2週間は充分もつだろう。毎月、35家族がSEEDSインディアの施設に集まり、この食料の寄付を受け取るだけでなく、互いに挨拶を交わし、お茶やお菓子を片手に歓談する。子どもたちが笑ったり、遊んだりしていて、とても賑やかな雰囲気だ。
SEEDSインディアはアジア学院の卒業生、トーマス・マシューが立ち上げた地元のNGOだ。困難な状況に置かれている人々を支援するために、多くのプログラムを行っている。とは言え、SEEDSの最も素晴らしいところは、その支援だけでなく、人々を高める方法にある。
トーマス・マシューは誰に対しても最大限の敬意を払うことで、言葉にせずとも、「あなたは貧しいかもしれない、病気かもしれない、耳が聞こえないかもしれない、でもあなたは重要な存在であり、必要とされているんだ。」と伝えている。
毎月、第2土曜日は祝日だから、人々が集まるには良い機会だ。しかし、その家族とは誰なのか?一体どこから来たのだろうか?
彼らは教育支援を受けている、子どもたちの家族で、全部で35人いる。つねに35人だ。子どもが18歳になると卒業し、また別の子どもがグループに加わる。このプログラムはかれこれ、25年間続いているという。
SEEDSは、子どもたちに学費を支払って終わり、とはしない。彼らは、家族の全員と長期的な関係を築き、本や制服、さらには少年少女が家で勉強するための机まで提供する。必要であれば、家族の住居やトイレのことも手助けする。また、病気や事故などの問題が発生すれば、SEEDSが一貫して支援する。卒業後も、SEEDSは人々がちゃんとやっていけているかどうか、見守り続ける。それは一回きりの支援ではなく、包括的なかかわりを通じた、長期的で愛情に満ちたケアなのだ。
トーマス・マシューはすべての家族、そしてその家族を構成するすべての人を熟知している。彼はその名前と一人一人の近況を、あなたに話してくれるだろう。
たとえば、ある男性には障がいのある息子がいて、父親は彼を、なるべくこの会合に連れてくるようにしている。また、SEEDSの孤児院で育った女性もいる。彼女は結婚して3人の子供がいるが、夫が出て行ったため、今は苦労が絶えない。トーマス・マシューはこれらの人々のためにしているすべてのことを通じて、大いに尊敬されているが、本人は賞賛を望まない。感謝を表したいのなら、他の人たちにも同じことをしてあげるのが一番だと彼は言う。「私より上手くやってくれ!」
これらの家族のほとんどは、トーマス・マシューが言うところの「良い地位」に上り詰める。人々は自立し、独立する。皆、社会の最下層に位置するダリット(不可触民)の出身で、多大な差別に直面しているが、このような環境では、そのことを意識することはない。全員が尊厳をもって扱われ、受け入れられている。
この日の集まりが終わると、家族たちは一つずつ袋を受け取った。二人がかりで運ぶ様子も珍しくなかった。袋は重かったが、これから数日間、何を食べなければならないかという心配の重荷からは解消された。
皆、大通りまで談笑を続け、ある者は徒歩で、ある者はミニキャブに分乗して帰宅した。その後、トーマス・マシューは個人的に、来ることのできなかった盲目の女性に、食料の山を一つ届けた。
薄明かりの中で繰り広げられるこの光景を目にすれば、食べものによって生み出される平和を見出すのは、さほど難しくないだろう。
文、写真・スティーブン・カッティング(アジア学院 卒業生アウトリーチ・コーディネーター)
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【「食べものからの平和」卒業生の食卓から ① — 序章】
【「食べものからの平和」卒業生の食卓から ② 】← 今ここ
今週アジア学院では、ゲスト講師として鎌田陽司さんをお迎えし、「ローカリゼーション(地域化)」と地域の価値についての講義が行われました。学生たちは、伝統的な文化や共同体の良さ、そして現代の開発に伴う課題について考える時間を持ちました。課題には、環境破壊、地域経済の弱体化、家族や文化のつながりの喪失などが挙げられました。
講義ではさらに、経済的グローバル化の問題点にも触れられました。たとえば、不安の増加、気候変動の加速、資源の無駄遣いなどがその一例です。鎌田さんは「漏れたバケツ」という比喩を用い、地域経済がどのようにして外部への依存によって力を失っていくかを説明しました。燃料や機械、医薬品、さらには海外の教育など、外部にお金が流れてしまう「漏れ」が地域の力を削いでいきます。
講義では、これらの「漏れ」をふさぎ、地域内での自立や伝統的な知恵を活かすことの重要性が強調されました。学生たちは、持続可能で回復力のある社会のために、今自分たちにできることを考える貴重な時間を持ちました。
食べものからの平和。これは、アジア学院の夏の寄付キャンペーンのテーマで、私はこのテーマに関して、アジア学院の卒業生たちから学ぶべきことを皆さんに伝えてほしいと依頼されたのだった。
ところで、私の名前はスティーブン・カッティング。卒業生アウトリーチのコーディネーターで、つまりは卒業生の窓口というわけだ。実際に、私はほとんど毎日、卒業生と会話をしている。だから、おそらくこの仕事には適任というわけだ。
とはいえ…食べものからの平和。食べものからの平和。これは実際のところ、どういう意味なのだろうか?
食べものがないところに平和がないことは容易に想像できる。空腹の人は怒りやすいという言葉を聞いたことがあるだろうか?英語ではお腹が減ってイライラする人を形容する造語すらある。それは、hangryという言葉だ。hungry(空腹) + angry(怒り) = hangry。
あるマラウイの学生が、私に話してくれたことがある。彼が子どものころ、家に食べものが何もない時があったと。母親は、彼に一杯の水を飲ませて寝かせたそうだ。朝には何かにありつけることを願いつつ。彼はちゃんと眠ることができたのだろうか。
別のウガンダの卒業生は、クラスメイトと一緒に学校へ行き、授業中にこっそり食べ物を探していたという。朝食は食べていなかったのだろう。彼らがどこに食べ物を探しに行ったのかは分からないが、空腹を満たしたいという衝動は、数学や歴史を学ぶことよりもはるかに大きな関心事だったことは確かだ。
また別のスリランカの卒業生は子どもの頃の話をしてくれた。彼は10人きょうだいの一人で、父親は日雇い労働者だった。もし、父親が仕事を得ることができれば、彼も食事にありつくことができた。そうでなければ、家族全員、空腹のままで眠りにつかなければならなかった。
食べものなしに、平和を得ることができるのだろうか?反対に、食べものは平和をもたらすのか?
きっとそうだと思う。
高見先生が教えの中でしばしば食べ物について力説したのは、おそらくこのためだろう。彼はこう記している。「私たちは、少なくとも主食を自給自足できるようにならない限り、自己意識や自立性を得ることは事実上不可能であることを経験的に知っている。」そして、「ひとといのちを支える食べものを大切にする世界を作ろう」というのが、フードライフという言葉の根底にある。おそらく、このような食への優先度は、彼自身の飢餓体験からきているのだろう。
戦後、高見先生は貝を獲るために2つの山を登って海へと足を運んでいた。泳ぎを習得するために溺れそうになったが、貝を売って米や塩に替えることができた。これは自分と家族の食糧になる。彼に飢えへの切迫感がなければ、決してこんなことはしなかったはずだ。
国家の平和。家族の平和。心の平和。お腹が満たされた時のシンプルな心地よさ!
アジア学院のフードライフは農業を行うだけでなく、コミュニティとして食べ物を育て、料理することを目的としている。すべての食事は、私たちの労働と収穫を共に祝うものなのだ。これはなんと平和な風景だろう。
さて、始めの質問に戻ろう。アジア学院の卒業生たちから、食べものからの平和について何を学ぶことができるだろうか?それは彼ら/彼女らに聞けばわかることだ。そして私はそのメールアドレスとWhatsAppの番号を知っているので、ただそれを実行し、私が発見したすべてを、これからの数週間にわたって、皆さんと分かち合いたいと思う。
文、写真・スティーブン・カッティング(アジア学院 卒業生アウトリーチ・コーディネーター)
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「食べものからの平和」卒業生の食卓から ① — 序章 ← 今ここ
アジア学院にて日本文化を体験するコミュニティイベントが行われました!
学生たちは浴衣を着て、折り紙や茶道、あやとり、巻きずし作りなどのブースで日本の伝統文化を楽しみました。三味線のライブパフォーマンスもあり、最後はみんなで盆踊りを踊って和やかな時間を過ごしました。
多様な背景を持つ学生たちが、真剣に日本文化を学びながら交流を深める姿がとても印象的でした。こうした場を通じて、異文化への理解や尊重が育まれ、学生たちにとって貴重な経験となったことと思います。
モーニングフードライフワークが始まる様子を収めてみました。
ファームショップから必要な道具を取り、畑や家畜の世話に向かいます。
朝の太陽の光をたっぷり浴びながら体を動かすのは、とても気持ちがいいものです。
みなさんも熱中症にはどうぞ気をつけてくださいね。
毎年恒例、豊かな実りに感謝するアジア学院最大のイベント「収穫感謝の日(HTC)」が、今年もやってきます!
先日、第1回目のミーティングが開かれ、学生たちから多くのアイデアが提案されました。今年のHTCも、にぎやかで楽しい2日間になりそうです!
開催日は 10月18日(土)・19日(日) です!
どなたでも大歓迎ですので、ぜひ遊びに来てくださいね!
アジア学院では、PRAの授業が行われ、学生たちはそれぞれの出身地域に分かれて、地域の課題について話し合いました。PRAは、地域の人々が自分たちの力で問題を見つけ、解決に向けて考える方法で、開発の現場でもよく使われています。
授業では、問題の「原因」と「その影響」を整理する活動も行われました。多くのグループが共通して取り上げたのが「ごみの管理(waste management)」です。ごみの処理が不十分なことで、川や土壌の汚染、病気の原因になっている例が多く出されました。学生たちはお互いの地域の違いや共通点を知り、どんな取り組みができるかを一緒に考える貴重な学びの時間となりました。
6月22日、学生4名と職員1名が「アジア学院サンデー」として東京の日本基督教団 中目黒教会にお邪魔しました。
礼拝では、インドネシア出身の学生で牧師でもあるベリさんが母国での体験を交えた説教を語りました。
その後の愛餐会(昼食会)では教会員さん手作りの豪華なお料理を頂きながら、各学生にマイクが回され、自分の国や仕事のことを発表しました。
先日の東京ホームステイプログラムで学生のホストファミリーを務めてくださった2家族もお越しくださり、嬉しい再会のひとときとなりました。
長年のサポーターであり、温かく迎えてくださった中目黒教会の皆様に改めて深く感謝いたします!
7月にも、栃木と群馬の色々な教会でアジア学院サンデーを行います!詳しくは、下記ページをご覧ください。
7月のアジア学院サンデーのお知らせ
写真提供:中目黒教会
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