皆さんは、アジア学院の学生たちがどのような過程を経て、日本に来るかご存知ですか?
アジア学院では現在、キャンペーンの一環として、学生たちのアジア学院までの道のりを追うシリーズを、4回に分けて連載しています。
シリーズ第2弾は、今年、研究科生としてアジア学院に戻ってきた、マラウイのヴェーさんです。
彼女は、地元・リロングウェではちょっとした有名人です。というのも、彼女はラジオ局のパーソナリティ!低めの滑らかな美声で、農業の番組を担当しています。アジア学院を知ったのも、あるリスナーとの出会いがきっかけでした。
【ヴェー(2018年卒 マラウイ)の場合】
ヴェニタ・カドゥヤ(ヴェー)は、マラウイの首都・リロングウェの出身だ。アジア学院の学生では珍しく、わりと都会に育ったが、自分がマラウイの外に出る日が来るなど、想像もしなかったという。
ある日、ラジオ局のパーソナリティとして、農家向けの番組を担当していた彼女のもとに、一人の男性が訪ねて来てこう言った。
「あなたの番組は素晴らしい。でも、もっと多くのことを学ぶべきだ。アジア学院という場所を知っているかい?」
それが、彼女が初めてアジア学院のことを耳にした瞬間だった。外国と言っても、せいぜいジンバブエか南アフリカにあるのだと思ったが、実は日本にあると知ったのは、さらに後のことだ。職場のラジオ局は理解を示し、応援してくれた。彼女も興味はあったものの、いかんせん、日本はまったく未知の国だ。それに、家族を残して国を出ることに、ためらいを覚えた。3人の子どものうち、末っ子の男の子はまだ1歳4か月という幼さだった。
ワクワクと恐れが入り混じった複雑な感情を抱えたヴェーを勇気づけたのは、他でもない、彼女の家族だった。夫と母親は彼女に言った。「人生とは多次元なものだ。一歩外に出て、学ばなければならないこともある。」そして、彼女が留守の間、子供たちの面倒を見てくれたという。
彼女は、2018年の学生として受け入れられ、アジア学院北米後援会(AFARI)の奨学金を受けて、9カ月間の研修を終えることができた。
長期に家を空けての遠い地での学びは、決して楽なものではなかったと思うが、彼女は研修を通して、それに値するだけの成果を得たという。アジア学院はヴェーに、農業の知識を与えただけでなく、心身の成長も促した。学院は人を変える場所だと彼女は話す。「人々は変えられましたし、私自身も変えられました。」そうして、目も心も開かれたヴェーは、勇気を得て、自分の住むコミュニティをより良くしたいと考えるようになった。そして、人々と共に働くために自分の持つすべての知識を活用し、いくつかの新しい活動を始めた。
一つは、生理用ナプキンのプロジェクトだ。マラウイでは、思春期を迎えた女生徒の中退が問題となっている。生理用ナプキンがないから、毎月、生理の一週間は学校を休んでしまい、結局挫折して辞めてしまうという。その後の選択肢はほとんどなく、早いと14歳で結婚させられる子もおり、生理の問題は早婚という、さらに深刻な問題にもつながっている。
アジア学院で、再利用可能な布ナプキン作りを学んだヴェーは、帰国後、自宅からほど近い小学校の校長に、この技術を女の子たちに教えさせてもらえないかと持ちかけた。「問題ありません。すぐに始めてください。」と即答された。このような話題は、この社会ではタブーだとみなされかねないので、驚きだったという。こうして、この7年間、ヴェーは少女たちに布ナプキンの作り方を教え続けている。2,300名の生徒の3/4が女性なので、この製品の需要には事欠かない。現在、学校はこの布ナプキンを作るための仕立て屋を雇っているが、ヴェーは少女たちが自分たちで作る方法も確実に学べるようにしている。
もう一つは、地元の市場から出る残飯などを利用して作った堆肥を売る女性グループを支援するプロジェクトだ。堆肥を買い取ってくれる会社と契約することにより、彼女たちは安定して収入を得て、家計を支えることができるのだ。ヴェーは今年、研究科生として、アジア学院のFEAST(食育と持続可能な食卓)部門で、食事作りや食料保存の技術習得を目指すが、その知識で、さらにこのグループの女性たちの生活術を磨きたいと考えている。というのも、雨季と乾季のあるマラウイでは、一年を通して、安定的に野菜を得るのが難しい。そこで、多くの野菜が収穫できる季節に、それを加工して保存しておけば、手に入らない時期に、野菜に支払うお金を節約できるというわけだ。そうして、節約したお金を、教育や住宅のために用いることができる。
ヴェーは新年度の学生たちと関わることをとても楽しみにしている。おそらく人々は、自分が学生だった時と同様の困難やカルチャーショックを経験するだろう。期待と不安が入り混じった気持ちでいる学生たちに、自分がどのように克服したかを伝え、勇気づけたいと思っている。
彼女の穏やかなまなざしの向こうにはどんな未来が描かれているのか、これからの学びと働きが楽しみだ。



ナプキンプロジェクトの女子生徒たち


シリーズ記事はこちら
【ご存知ですか?農村コミュニティリーダーたちのグレイト・ジャーニー】①