8月にアフリカを訪れた、アジア学院職員スティーブンが書く旅行記を、シリーズで皆様にお届けしています。
今回は、会議に集まった、卒業生たちの活動についてお伝えします。語られた偉業の裏に、その何十倍もの苦労が隠されているとは思いますが、確かに、学院での学びがコミュニティの人々の生活向上に貢献していることを感じます。
それでは早速、アフリカの旅へ出発です!
【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 20-23日目 その2】
アジア学院 卒業生会議
アジア学院北米後援会(AFARI)は、アジア学院の卒業生を招いての会議を開催した。こうすることで、卒業生たちはシンポジウムの恩恵を受けることができるし、互いに学び、分かち合い、親睦を深めることができる。AFARIのタール・フェローシップ・プログラムの参加者の3名、サイダティ・”サイラブ“・ムロルンクウェレ (2020年卒、ルワンダ)、パトリック・クリエ(2019年卒、リベリア)、マンブッ・サマイ(2018年卒、シエラレオネ)は飛行機で駆けつけた。
周辺地域の卒業生も歓迎され、AFARIが会議の参加費、宿泊費、食費を負担し、交通費は各自で負担した。ザンビアからは、ジョン・ニョンド(1983年卒/1993年研究科生)とジュディ・ダカ(2001年卒)の2名が参加した。つい1週間前、親切にも、車で国のあちこち縦断して我々を案内してくれた夫婦だ。マラウイからは、ヴェニタ・カドゥヤ(ヴェー、2018年卒)、セシリア・ンピンガ(2016年卒)、アーネスト・マガンガ(2014年卒)、エネト・ンカスィクワ(2013年卒)、ジョン・チンカータ(2013年卒)、ンジャラ・バンダ(マクドナルド)神父(2010年卒/2016年研究科生)の6名が参加した。コンゴ民主共和国出身(モザンビークで活動中)のジョン・ンダイ(2010年)も申し込みをしていたが、ビザの遅れで参加できなかった。アフリカ外からは、シェリー・デレオン(AFARIスタッフ)、ベブ・アブマ(AFARI理事)、そしてスティーブンとカイ(アジア学院)が参加した。総勢13名だった。ややこしい名前ばかりで申し訳ないが、テストには出ないのでご心配なく。
日中は会議のイベントに参加し、夜は皆で集まり、ディスカッションをした。 これはAFARIにとって2回目(だったと思う)の卒業生会議であり、私は初めての参加だった。この集まりの雰囲気は、私が卒業生アウトリーチ部門で目指す、“アジア学院ファミリーを一つにする”、“グローバルな学びのコミュニティを作る”という目標とぴったり合っていて、本当に有難く感じた。
卒業生たちの簡単な近況報告
ここでは、何人かの卒業生からの言葉を少しだけ紹介しよう。これは決して彼らの仕事についての完全な説明ではないし、一部はこれまでの繰り返しである。彼らの人生を覗き見るための小さな窓だと思ってほしい。もっと知りたければ、ビデオインタビューも撮ったのでご心配なく! 彼らの素晴らしいストーリーは共有するに値するので、皆さんのために、私がきっちり編集したいと考えている!
マラウイのセシリア
「ヤギを飼っていると、お金持ちだと思われますから!」これを書き留めておいたのは、この言葉が、なぜ彼女がヤギのプロジェクトを始めることにしたのかをよく表していると感じたからだ。村の水準からすれば、これは経済的に前進するための具体的な行動だと言える。
マラウイのアーネスト
アーネストは衛生管理プロジェクト(HVP)でプログラム・オフィサーとして働いており、アジア学院での研修後に昇進した。残念ながらブランタイヤ行きをキャンセルしたため、彼の仕事を直接見ることはできなかった。名前からもわかるように、この組織は「皆が永続的に」をモットーに、水の衛生設備や公衆衛生に焦点を当てている。
彼らはエコサン・トイレを紹介し、その辺の茂みをトイレとして使わないことが、いかに衛生的に重要かということを人々に教えている。この地域の様々な場所で「ここは野外排泄禁止区域です。」と書かれた看板を見かけたが、アーネストによると、これはHVPが設置したものだという。彼らはまた、人々が清潔な水を利用できるようにするための井戸も掘っている。多くの人々はまだ川から直接水を汲んでおり、それがあらゆる健康問題を引き起こしている。マラウイの国家構想によれば、2030年までに清潔な水と教育への一般的なアクセスが可能になり、2063年までに全てのマラウイ人が中流階級の生活水準を獲得することになっている。アーネストは気候変動、特にマラウイ全土で起こっている砂漠化の問題についても触れた。「自然は今、反撃しています」と彼は述べ、サイクロン・フレディによる大規模な破壊を引き合いに出した。
「私は模範を示して人々を率います。突っ立っているだけではありません。自らかかわってく必要があります。」アーネストはこの言葉で、アジア学院で受けたリーダーシップ研修の重要性を強調した。アジア学院に入る前、彼は村に行き、ニーズに基づいた評価を行った。基本的には、村に行って何をするべきか指示していたのだ。今は、村人と一緒に座って問題を分析し、彼らの考えを聞き、一緒に計画を立てる。この方法によって、人々はプロジェクトに対してより主体性を持つことができる。これは、彼が朋子さん(学院の校長)のクラスで学んだPLA(参加型学習行動法)のアプローチである。
「指導を受ける人々と自分とのギャップが縮まりました。」とアーネストは続けた。「私が決断し、命令し、結果を集めるだけでは、人々はプロジェクトを自分のものにはできません。アジア学院のリーダーシップ・アプローチは、計画を立てて共に働くことで、達成の一体感をもたらします。私は経営陣にこのようなリーダーシップをとるよう働きかけており、徐々に浸透しつつあります。」
マラウイのエネト
アジア学院の後、エネトは夫を始めとする家族全員に支えられながら、専業農家になった。 農業を通じて、彼女は家族を養い、自分の知識をコミュニティに広めている。
ザンビアのジュディ
ジュディは、結核に感染した地域住民に結核治療薬を投与する“訪問保健ワーカー”を養成した。 薬をもらっても飲まないことが多いからだ。このようなボランティアの保健ワーカーたちの活動のおかげで、今ではコミュニティの結核患者は一人もいない!
マラウイのジョン
ジュディの結核の偉業を聞いて、ジョンも自らの経験を熱く語った。彼がまだ衛生管理プロジェクトに所属していた頃、マラウイ湖の近くにあるコレラ患者の多い地域に行った。そこで彼らと協力して簡易トイレを建設し、井戸を掘ったところ、新たなコレラ患者は一人も出なかった。彼は78の村を抱える別の地域でも同じシナリオを繰り返した!
シエラレオネのマンブッ
マンブッの松葉杖で農作業をするプログラムは、国中から集まった350名の下肢切断者を受け入れている。最近では、60名の下肢切断者の農民を対象に包括的なトレーニングセッションを行った。彼が約20年前に始めた下肢切断者スポーツ協会(SLASA)という名のサッカーチームは、アフリカ全土で最初の下肢切断者のサッカーチームである!彼らは国際大会に出場し、2024年のパリ・オリンピックの展示イベントにも招待された。
ルワンダのサイラブ
サイラブは、「1家族に1頭の牛」という国のプログラムに倣った、「1人の子供に1羽の鶏」プロジェクトについて話をしてくれた。彼女は子供たちのために何かしたいと考えた。というのも、「私の子供時代はあまり良くなかった」。ジェノサイドによる大量殺戮の最中に孤児となった彼女はそれ以降、トラウマのため、笑顔を見せることも、話すこともほとんどなかったという。今の彼女を見ていると、そのような一面を想像することは難しい。今の彼女は笑顔ではない時のほうが珍しいからだ。
子どもたちにはそれぞれ責任を持って世話をする鶏とアボカドの木が与えられ、将来のリーダーを育てることを目的としている。宗教や部族に関係なく、どんな子供でも参加できる。「差別はありません」とサイラブは強調する。これまでに100名の子供たちに鶏とアボカドの木が提供された。このアイデアはすべてサイラブのもので、彼女の団体はこれを全面的に支援している。
土曜日には500名の子供たちが集まり、農業や図画工作を学んだり、聖書の勉強をしたりしている。彼女自身はイスラム教徒だが、団体はキリスト教を基盤としている。このプログラムは、子供たち、特に女の子たちが学校に通い続けられるように助け、早婚を防ぐことを目的としている。
「アジア学院から戻ったとき、私は壮大なことを考え始めました。目が開かれたんです。」サイラブは、再利用可能な生理用ナプキン・プロジェクトも始めた。バナナの繊維を用いて、洗濯可能な生理用ナプキンを作るのだが、市販の使い捨てナプキンよりはるかに安く、2年間使用することができるという。このアイデアはアジア学院での生理用ナプキンの授業から生まれた。
彼女はまた、有機農業を始めて、同僚やコミュニティに堆肥の作り方を教えたいと、興奮気味に語った。「私が有機農家になれたのは、アジア学院のおかげです。」
リベリアのパトリック
アジア学院に行く前は教室にとどまるだけの教師だったが、帰国後は外に出て実践的に子供たちに教えるようになったと、パトリックは話す。彼の最初のプロジェクトは “教育のための農業 “と呼ばれるもので、学費を捻出するための小さな庭の作り方を子どもたちに教えた。これが後に、彼が発表した上げ床花壇の苗床を作るきっかけとなった。
タール・フェローシップからの資金で、彼は女性のための職業訓練を開始し、すでに持っていた3台のミシンに加えて、さらに6台のミシンを購入することができた。また、キャッサバや野菜の生産についても教えている。
文:スティーブン・カッティング(卒業生アウトリーチ担当)
旅の同行者:篠田 快(学生募集、採用担当)
シリーズ記事はこちら
Vol.19 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 20-23日目 その1】
Vol.20 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 20-23日目 その2】<== 今ここ!
Vol.21 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 24-26日目】To Be Continued …