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農村指導者たち ― アフリカ旅行記 Vol. 6

ザンビア、マラウイの卒業生を訪ねる旅 2024

8月にアフリカを訪れた、アジア学院職員スティーブンが書く旅行記を、シリーズで皆様にお届けしています。
7日目からは、ザンビア北部キトウェに向かいます。
途中寄った、卒業生が活躍する農業大学では、電気がなくても創意工夫して教育 / 学びを続ける人々との出会いがありました。
胃袋をつかまれる、スティーブンお決まりの食レポもお見逃しなく!
それでは早速、アフリカの旅へ出発です!

【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 7日目】

キトウェを目指して北へ
本日、我々はカッパーベルト州のキトウェに向けて出発した。キトウェの卒業生はもちろん、その道すがらでも、卒業生を訪ねる予定だ。
なぜカッパーベルト(銅山地帯)と呼ばれるか、お分かりだろうか。分からなくても大丈夫。のちにまた説明する。
長いドライブが待っていたので、午前5時に出発する計画を立て、5:30には無事に走り始めていた。

チペンビ農業大学
この北部地域への旅で最初に訪れたのは、チペンビ農業学校だった。9:30頃にマンゴーの木が立ち並ぶ入口に到着。リディア・チブウェ(2015年アジア学院卒)が我々を待っていた。リディアはこの学校の副校長で、正確な年数は聞かなかったが、すでに幾年か働いている。
別のアジア学院の卒業生、ポール・サンバも長年ここで働いており、初めは講師だったが、校長まで勤め上げた。ポールとは、のちにキトウェで会うことになっている。

看板にあるように、正式名はチペンビ農業大学で、ザンビア合同教会によって創設された。初年度の1964年の学生はわずか6名だったが、今では161名の学生がおり、女性が80名で、男性が81名、そのうち5名はハンディキャップを持つ。学校の包括的な方針によれば、その5名の学生も通常の全カリキュラムに参加している。学生たちは学費を払い、コースを修了すれば一般農業の学位がもらえる。全ての学生が敷地内の住居に住み、食事の準備も自分たちで行うが、大抵はトウモロコシ粉の一種であるミエリーミール (Vol.4に登場) が食べられている。

我々は10ヘクタールの農場で朝の散策を行い、リディアと農場長のナマスモと話をした。
大学というと畜産学や園芸の研修を学んでいると思われるだろうが、最初に立ち寄ったのはパン工房だった。通常ならば、オーブンからは素晴らしい香りが漂い、食パンやロールパンがずらりとトレーに並べられているはずだが…またもや、電気の問題だ。いつ電源が落ちるか分からないので、パンを焼くこともできない。この影響はカリキュラムだけに留まらず、パンの売り上げという学校の収益機能にも及んでいる。
次に我々は作業場を訪ね、あちこち行って何でも直してしまう男性に出会った。どんな学校もこのような人材なしでは、おそらく成り立たないだろう。彼は小型機械修理の授業も受け持っている。

次は、産卵鶏とブロイラー(肉用鶏)を育てる鶏舎に向かった。ヒナの育成期間は、担当する学生たちが10日間、昼夜を問わずヒナを見守る。一室に敷かれたマットレスがその証拠だ。
豚舎に行く途中、我々はユーカリの並木道を通った。葉を摘み取って薬にするようで、特に咳に効くらしい。
アフリカ豚熱(ASF)の流行で、豚はほんの数頭しかいなかった。興味深いことに、数頭は生き残ったという。ほとんどの場合、ASFが検出されると、他の豚舎や外部農場への蔓延を防ぐために、その豚舎の豚は迅速に全頭処分される。一部の豚が自力で生き延びたという話を聞いて、私は現在のやり方は、豚が病気に対する自然な抵抗力を獲得するのを妨げているのではないかと感じた。

牛も同じ病気にかかり、70頭から20頭に減少した。アジア学院では、家畜の病気に対する予防措置は日常業務の一部であり、学生もそれを学んでいる。しかし、完璧なシステムは存在せず、家畜が病気にかかるリスクは、農家にとってつねに大きな課題である。この学校のウサギだけは絶好調で、ウサギらしくどんどん増殖している!家畜の飼料はすべて、ヒマワリと大豆かす、トウモロコシのふすまを使って自家生産されている。

太陽の下での干し草作り
干し草のブロックを作っている学生たちに出くわした。みんな試験を終えたばかりで、明るい雰囲気だった。彼らのローテクな方法は独創的だった。まず、鎌で草を刈る。そして、四角い穴を掘り、底に麻ひもを張り、麻ひもが穴の外まで伸びていることを確認する。次に草を投げ入れ、固く踏み固め、コンパクトな立方体の干し草を作る。そして麻ひもを引っ張って干し草を持ち上げ、しっかりと縛る。ほら!これで機械や電気がなくても、干し草のブロックを作ることが出来る。だけど、最初に麻ひもを張るのを忘れると、ブロックを引っ張り上げることができなくて悲惨なことになる。

私は、ここでの堆肥作りと菜園の教育方法に感銘を受けた。
堆肥は山に分けられ、5-10名の生徒がそれぞれの山を管理し、栄養価の高い土に変えるために必要な手順を踏む。これらの山はアジア学院で使っているようなボカシではなかったが、リディアによると、ボカシの作り方も教えているとのこと。
学生菜園のやり方は少し違う。グループで作業するのではなく、それぞれの生徒に1つずつ畝(うね)が与えられ、その畝にトマト、ナス、ニンジンなど様々な作物を植える。生徒たちは土作りから収穫まで、全て自分たちで行わなければならず、作物の間隔、成長率、植物の健康状態など、その出来栄えで評価される。生徒たちは互いに比較し、競い合う。作物を見るだけで、誰がうまくやっていて、誰が苦戦しているかが分かる。ナマスモ農場長は、ある女子生徒の畝を指さして、彼女が一番だと言った!

カイと私は、庭に木製のスタンドが並んでいるのを見て不思議に思った。ナマスモが、バケツに水を入れたものがそこに設置される予定で、ホースでつないで簡単なドリップ灌漑システムを作るのだと説明してくれた。そのすぐ先には、先週、生徒たちが掘ったばかりの新しい池を含む、いくつかの養魚池があった。池にはビニールが敷かれ、魚のえさは市販品に野菜くずを加えている。

農場はオーガニックではないが、リディアはそれを目指している。タマネギとニンジンは無農薬で栽培され、他の野菜も試みているところだという。会議室で飲み物とクッキーをごちそうになり、訪問は終了した。3時間の滞在は短すぎたが、私たちは先に進まなければならない。キトウェはまだ先だ。

北へと続く、”イカした”道
午後1時、我々はチペンビを後にした。予定よりだいぶ遅れての出発だったが、そもそもの予定自体があまり現実的ではなかった。
再び、偉大なるノース・ロード、あるいはグルーヴィー*・ロードを走り出した。というのも、大型トラックが長い区間にわたって車輪の轍を刻んでいくからだ。これにハンドルを取られると本当に危ない。ジョンがうっかり狭い車線からはみ出したことは一度や二度ではなかった。
トラックはザンビア全土、さらにはタンザニアやコンゴ民主共和国に至るまで、あらゆる物資を運んでいく。しかし、この地域で最も盛んに行われているのが、広大な鉱山からの銅の運搬である。これが、この地域が銅山帯と呼ばれるゆえんである。途中何度か、料金所や警察の検問に出くわす。道路があまりにひどいので、ある時ジュディは、このお金が一体どこに使われているのかと尋ねた。係員はこの手の苦情をいつも受けているのだろう。彼は、新しい道路が現在の道路と並行して建設中であると言った。きっとそれは本当だ。私たちが走ってきた全行程で、様々な開発段階にある道路を目にした。まもなく、狭い2車線の道路は4車線の高速道路になるようだ。
検問所の一つで、ジョンは前に停車している車を数台追い抜いた。何らかの理由で車が停まっていることはよくあることで、そこが検問所だと気が付かなかったのだ。警官の姿を見て、彼はこっそり列に戻ったが、警官の心には響かなかったようで、怒り心頭で彼を”走り屋“だと非難した。ジョンはその物腰の柔らかさと謙虚な性格ですぐに事態を収拾した。

昼食は、フリンギラという指折りの素晴らしい店に立ち寄った。肉は全て、ジューシーで大きな塊で売られており、周辺の農場で育てているので、とても新鮮で美味しい。ここは確かに肉の国だ!カイと私は自家製ソーセージ、ニョンド一家はビーフシチューを食べた。けれども、この店の名物はミートパイで、彼らの言うミートパイは、本当にしっかりした肉のパイだった!今でもその味を思い出すことができる。
レストランの創業者は、ジョンがこの地域で牧師をしていた時の教会員で、昔からの知り合いだった。残念ながら、彼は昨年亡くなった。

グルーヴィーな道をさらに数時間走った後、ムポシ・カピリにあるMa22というこざっぱりとした快適なロッジで夜を明かした。良いロッジはセキュリティに手厚く、全体が塀で囲まれているため、車やトラック、バイクなど、どんな乗り物でも24時間体制で警護してくれる。

*グルーヴィー(groovy)は英語で「すてきな」「かっこいい」などの意味(ただし、60-70年代のレトロな言い方…)と同時に「溝のような」という意味もある。


文:スティーブン・カッティング(卒業生アウトリーチ担当)
旅の同行者:篠田 快(学生募集、採用担当)

シリーズ記事はこちら

Vol.0 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 序章】

Vol.1 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 1-2日目】 

Vol.2 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 3日目】

Vol.3 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 4日目】

Vol.4 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 5日目】

Vol.5 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 6日目】

Vol.6 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 7日目】<== 今ここ!

Vol.7 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 8日目】To Be Continued …


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