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農村指導者たち ― アフリカ旅行記 Vol. 8

ザンビア、マラウイの卒業生を訪ねる旅 2024

8月にアフリカを訪れた、アジア学院職員スティーブンが書く旅行記を、シリーズで皆様にお届けしています。

昨日、キトウェに到着した一行は、ザンビア合同教会大学との会合を行いましたが、今回は同じ敷地内にあるミンドロ・エキュメニカル財団(MEF)の話です。
一片の皮からじゃがいもを量産…?
1,000ヘクタールの農地って一体…?
自分たちの土地に不法滞在していた人々に無償で土地を与え、生き延びる術を教える…?
MEFでの農場見学は、驚きにあふれていました!
それでは早速、アフリカの旅へ出発です!

【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 9日目】

ミンドロ・エキュメニカル財団(MEF)
休暇中だというのに、今朝のチャペルでの賛美礼拝には、それなりの数の学生たちが来ていた。リマインドするが、この敷地内にはザンビア合同教会大学と、ミンドロ・エキュメニカル財団という二つの教育機関がある。昨日我々は大学の人々と過ごし、今日は財団の人々と過ごしている。今日行われる最終試験のために来ている学生もいた。予想通り、礼拝は歌にあふれ、その歌声は本当に素晴らしかった。ゲストとして合唱団も来ていた。牧師であり、教授であり、博士でもあるホイス氏が説教をし、我々のことを紹介してくれた。彼女は、カイがアジア学院に入学する可否を決める権限を持つ採用担当であることから、彼のことを”ビック・ポテト”と呼んだ。

きっちりと議題が印刷された公式の会合に向かう途中、ハンスが、MEFはここ数年で大きく衰退してしまったが、理事長のマダム・ホイスが懸命に再建に取り組んでいることを話してくれた。ちなみにハンスは、Bread for the Worldという団体のドイツ支部から派遣されているボランティアだ。3年余りある任期のうちの、8カ月を終えたところで、有機農業の技術者として長年エクアドルでの開発事業に携わってきた。

会議の参加者は、2020年から専務理事をしているマダム・ホイス、ハンス、牧師、設備管理責任者 (なぜ彼がいたのかは不明だが、とても自然な感じで)、そしてもちろんカイと私だ。最初に要求された仕事は、大きなハードカバーのゲストブックにサインすることだった。そしてマダム・ホイスが、修士課程の「平和と紛争解決」に代表される、いくつかの教育プログラムについて説明した。また、ザンビアでも指折りの、大規模な図書館を有しているという。どうやら、農業プログラムは一度停滞したが、2021年に再開し、現在は農業科があり、57名の学生がアグロエコジーについて学んでいる。

MEFは日本政府といった、協働するパートナーを増やすことに力を注いでいる。日本大使館に提出した計画の例として、農場へのソーラーパネルの導入がある。干ばつによる停電が続いており、電力供給は継続的な課題だからだ。加えて、次年度にはJOCVボランティアの派遣にも期待を寄せている。
我々の訪問も、構築、または再構築されたパートナーシップの一つだ。私は、旅の数カ月前からMEFと連絡を取り始め、80-90年代にかけて彼らがアジア学院に派遣した4名の卒業生の消息を聞いていた。結果は、2名は逝去、1名は消息不明、残る1名はすでに退職し、ナコンデ在住とのことで、彼女とはワッツアップで会話することができた!MEFは、関係を再構築する良い機会だと捉え、私の要求に迅速に対応してくれた。すぐにズームでの会合をリクエストし、今回のザンビア旅行中に立ち寄ることも快諾してくれたのだ。会合では、2名のアジア学院の学生候補も紹介してもらい、のちに二人と直接話す機会も得た。

農業に関しては、MEFは驚くことに1,000ヘクタールの農地を有しており、ほとんどは手つかずだという。元々、政府から譲渡された土地は、2,800ヘクタールあったが、約2/3は売却した。キャンパスからミンドロ研修農場へは軽いドライブが必要で、農場長のジェイコブ、副農場長のイーブリンがMEFの他の職員と同行し、我々を案内してくれた。

現時点で、5頭の牛、47頭のヤギ、56頭の豚、そして約100羽の地元品種の鶏がいる。ここの牛は、ホルスタインと地元のンゴニという血統の交雑種だ。一番大きい牛は、マウンテンと呼ばれていた。糞尿は堆肥の重要な材料として集められており、堆肥づくりも研修の一環だという。水源は深掘りの井戸だが、必要量は満たしておらず、より深い穴を掘りたいと考えている。小さな畑ではナスとアマランサスといった混作を行っている。アマランサスは栄養に富み、ミエリーミールと混ぜたりして食べられている。また、トウモロコシと緑豆の混作も行われている。このトウモロコシは大きくて赤い粒を持つ、この地域特有の品種で、干ばつに強いと言われている。ジェイコブは間引きしたニンジンを植えなおす実験を行っており、全く問題なく育っていることを誇らしげに報告した。

ある区画には袋で育てられたジャガイモが並んでいた。芽のついている、ぶ厚い皮の一片を植えれば、ジャガイモを収穫できるのだ。袋で育てれば、保水もできるし、場所もあまり取らない。ジェイコブが嬉々として取り入れている数々の新しい方法は、20年の歴史を持つドン・トラスト・ファームという、ンドラにある農場での研修で得た、先駆的な有機農業の技術だという。

原住民の人々のための、在来種の木々
ジェイコブは、マラウイで行われているという、”ファミリー・プロット”という観念を紹介してくれた。それは、60×39メートルほどの小さな土地で、世帯ごとに自分たちで消費するトウモロコシを育てるというものだった。52列の畝にトウモロコシを植えるというのがそのアイディアだが、畝は、5人家族が一週間食べるのに十分な長さにする必要がある。52列あれば、年間を通して食べ物に困らない。小さい畑なので、家の近くに作ることができ、手作業で水やりをするにしても、家族単位で管理しやすい。この仕組みは、従来の、販売を目的とした大規模なトウモロコシ栽培のやり方とは対照的である。広大な土地は一般的に住居から離れており、雨水任せだ。ジュディが言うには、ザンビア人はトウモロコシにひどく依存しており、それが「自分たちの首を絞めている。」「私たちはヤムイモやヒエ、アワ、タカキビなどもっと多様に育てて食べるべき。」

MEFは、年間1,100本を目指して、2020年から植林を始めた。すぐに彼らは、地元の人が苗を移植した土地を燃やしてしまうという問題に直面した。焼き畑は、農業用の土地を切り開くために、よく行われている方法だ。しかしながら、農業を行わない土地も燃やしてしまう。その煙が雨をもたらす雲を発生させると信じているのだ。彼らは10年前にやった時と同じように、また雨が降ってくれることを切に望んでおり、森林が減少すれば、もっと雨が降らなくなるということを知らない。だから、MEFの職員は、森林と植林の重要性、そして、それを燃やしてはならないことを人々に教えている。

ジェイコブは、マスクツリーや、スンゴレツリーといった、土着の木を育てる努力をしているが、それらを発芽させるのは容易ではない。彼は果物の木や、アカシアの木(マメ科で、窒素固定をしてくれる)も植えている。苗は、雨期の始めに移植しているので、恐らく11月頃になると思われるが、近年は予測が難しい。

新しい村が作られた
MEFがこの土地を手に入れた時、その一部には、不法に滞在している人々がいた。MEFは彼らを追い出すどころか、各家族に3ヘクタールずつの土地を与えた。人々はチログウェと呼ばれる小さなコミュニティを形成し、MEFは、発展のための小さなプロジェクトと研修を行っている。彼らは土地を手に入れたが、充分な収量を得ることができていない。政府から肥料の配給があった時にだけ、作物を植えるからだ。それは不定期で、量も不十分なので、一日に1,2回しか食事が摂れない。そのため、MEFが彼らを助けるために最初に行ったことは、土壌改善だった。前述したように、焼き畑をするのではなく、葉や低木を堆肥にするやり方を教えた。
また、”路地状の農場”も試みており、そこでは、幅3メートルにわたって自生する森林が、風除け、木陰、保水などの機能を果たしている。その森林の間に、8メートル幅の農地が挟まれ、ストライプのようになっているというわけだ。そのコミュニティは、我々がいるところからはかなり離れたところにあるので、訪ねることはできなかったが、MEFが家屋を数軒と、3ヘクタールのコミュニティ農場を作る計画を立てている地域は通った。
二人の人が井戸掘りをしており、フィリという名の男性が、深くて狭い穴の底で、バケツに泥を入れ、上にいる男性がそれを引き上げて、中身を空にしていた。この泥は、新しく作られる家々のレンガの材料となる。その場所には、すでに2つの教会が建てられており、本当に村は遠いのだろうかと不思議に思った。将来的には学校とクリニックが建設される予定だ。より良いコミュニティを考える時、健康と教育は決して欠かせない!

ジュディは、先に述べられた、チログウェ・コミュニティの人々が1日に1、2回しか食事が摂れず、政府から配られる(不規則な)化学肥料に依存していることを繰り返した。この情報は、彼女がコミュニティを訪問し、人々と会話する中で得たものだった。MEFは村人たちが3食食べられるようになることを目指している。彼らは、“贈り物の譲渡” ヤギプロジェクトを開始したいと考えており、鶏も配布する予定だ。鶏が産む卵を食べるか、MEFに託してヒナにかえすか、自由に選ぶことができる。この特定の地域では、人々は焼き畑を行わなくなり、土地を耕すのに全ての木を燃やす必要がないことを知った――これは前述の路地耕作のことを指していると思われる。また、トウモロコシとキャッサバだけではなく、タカキビ、ヒエ、アワ、大豆など多様な作物を育てるように指導を受けている。ある家族が、新しい農法で成功しているのを見れば、近所の人たちも真似をするようになる。

我々が見学したコミュニティのプロジェクトはドイツの教会の支援を受けているという。教会がコンクリートなどの材料を提供し、コミュニティは労働や、レンガのための泥といった地域資源を提供している。

文:スティーブン・カッティング(卒業生アウトリーチ担当)
旅の同行者:篠田 快(学生募集、採用担当)

シリーズ記事はこちら

Vol.0 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 序章】

Vol.1 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 1-2日目】 

Vol.2 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 3日目】

Vol.3 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 4日目】

Vol.4 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 5日目】

Vol.5 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 6日目】

Vol.6 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 7日目】

Vol.7 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 8日目】

Vol.8 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 9日目】<== 今ここ!

Vol.9 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 10日目】To Be Continued …



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