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農村指導者たち ― アフリカ旅行記 Vol. 16

ザンビア、マラウイの卒業生を訪ねる旅 2024

8月にアフリカを訪れた、アジア学院職員スティーブンが書く旅行記を、シリーズで皆様にお届けしています。
今回訪ねた村でも、あの強烈なニャウの踊りが彼らを迎えました!
「指導者が国民に団結を求めれば、国民は団結する。指導者が民衆に戦うことを望めば、民衆は戦うだろう。」というマクドナルドの言葉に、良き指導者とは何か、深く考えさせられます。
それでは早速、アフリカの旅へ出発です!

【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 17日目】

チクウィンガ村
今日はまた別の村を訪ねることができた。そう、これが、我々がはるばるやって来る理由だ。卒業生たちの仕事について話を聞くのも一つだが、村の景色や音、匂いを感じ、村の人々と話し、その生活がどのようなものかを知り、人々の人間性の美しさや苦しみを目の当たりにすることも、また別の意味を持つ。マクドナルドは親切にも、埃っぽい道を運転し、チクウィンガ村という場所に我々を連れて行ってくれた。
そこで再び我々は歌と踊りの出迎えを受けた。これには飽きることがない。今回はニャウが女性たちと一緒に踊っており、相変わらずの激しさだった。彼らの仮面は以前目にした踊り手たちのものとは違っていて、その様式にはそれぞれ意味があると思うのだが、聞いてもなかなか深い説明を得られない。

ヤギは良い!
ここの女性グループは、「統合的ヤギ譲渡プロジェクト」と呼ばれており、セシリア・ンピンガ(2016年アジア学院卒)が始めた。彼女が初めてこの場所を訪れたのは2018年で、衛生管理プロジェクトというNGOとともに、エコサントイレについて教えるためであった。 その時、日々の暮らしに困難を抱える12 名の働き者の未亡人グループに出会った。そこで2022年、AFARI(アジア学院北米後援会)のタール・フェローシップからの資金援助を受け、ヤギのプロジェクトを開始し、18頭のヤギ(オス6頭、メス12頭)を購入し、女性3名につき2頭ずつ配布した。女性たちは2人1組で作業するので、必要に応じて助け合うことができる。

我々のささやかな集まりは、それぞれの女性の自己紹介から始まった。マクドナルドは一人一人の名前を聞き、それが正しいかどうかを確認するために注意深く繰り返した。この単純な行為が、親密な関わりを育んでいることを感じ、感銘を受けた。彼女たちは、譲り受けたヤギがまだ若く、最初の子供が生まれるまで時間がかかったため、まだ「譲渡」は始めていないと説明した。子ヤギを何頭か譲り受けて、一人10頭ずつ飼育する予定だという。 ヤギから得られる一番初めの恩恵はその糞尿で、葉っぱと一緒に堆肥にして、畑で使用している。これまでに稼いだわずかなお金でタケノコを購入し、育てて売っている者もいる。気候変動は彼らにとって大きな課題であり、特にこの春の干ばつは深刻な影響をもたらした。

ありがとう、セシリア
彼女たちは皆、農業やヤギの飼育の新しい技術を教えてくれたセシリアに感謝しており、給料ももらえないのに、助けを求めるといつも来てくれると話した。セシリアはまた、政府の農業アドバイザーとの橋渡しもしてくれる。彼女たちの夢は、このプロジェクトを拡大し続け、鉄板屋根を買えるだけの資金を稼ぎ、十分な衣食住を確保することだ。

会合の後は、ヤギの世話を見学するために村を散策した。小屋で飼われているものもいれば、フェンスで囲んだ場所で飼われているものもいた。どのヤギも、安全のために家の近くで大切に飼われている。家畜が盗まれることは珍しくない。餌にはトウモロコシのふすま、マメ科の植物、緑の葉と塩を少々与えている。マラウイの村の暮らしは決して楽ではないが、このような小さなプロジェクトが人々の生活に著しい改善をもたらす。アジア学院の卒業生であるセシリアが、彼女たちのために自らの意志でこのような取り組みをしているのを見て、私は誇らしい気持ちになった。

出発前、カイと私はセシリアにビデオ・インタビューを行ったが、数日後、彼女はアジア学院の研修で受けた影響について、次のような追加のメッセージを送ってくれた。
「アジア学院で学んだことを話す機会に、もう一つ、言わなかったことがありました。それは、自分の強みについてです。アジア学院の研修に参加する前は、会議で発言するのも恥ずかしかったし、自分一人で活動を行う勇気もありませんでした。帰国後は、コミュニティの会合で発言したり、教会や地域、家族、職場で大きなイベントを企画・実施したりすることができるようになりました。誰かからイベントを請け負うように指名されれば、私は良い結果を出すことができます。例えば、私の一族の家族レベルでも、私がイベントを計画し、それを実行するので、皆、私を頼りにしてくれます。家族のなかには、イベントを担う私のことを『プロトコル(議定書などの意味)』と呼ぶ者もいます。コミュニティには、結婚式の手伝いに私を加え、私にチーフ・プロトコルの役職を与える人もいます。アジア学院の収穫感謝の日や農村地域研修旅行を通して、私はこの強みを得たのです。」

正午頃、我々はマクドナルドとともに街に戻った。午前中の出来事を振り返って、彼はこう言った。「指導者が国民に団結を求めれば、国民は団結する。指導者が民衆に戦うことを望めば、民衆は戦うだろう。」これは、彼が全国各地のコミュニティを見てきた経験から来るものなのだろう。チクウィンガ村のような場所やセシリアのような人々を見ると、彼は大いに勇気づけられる。しかし、貪欲で利己的なリーダーシップを目にしたとき ―それは決して稀なことではない― 彼は大いに失望する。

WOGミーティング
(ロード・オブ・ザ・リングがお好きな方なら、何を考えているかはお見通しです!)

ジェフリーの家に戻り(彼がジョンの弟で、ジョンが2013年アジア学院の卒業生であることを思い出してほしい)、盛大にWOGミーティングを行った。WOGとはジェフリーの組織、Word of God ministriesのことだ。全スタッフが招かれ、庭で輪になって話をした。
詳しい話をする前に、マラウイのことわざを紹介したい:“客は露のようなもの。 すぐに来てすぐに去る。”
もてなす者は客と過ごす短い時間を大切にしなければならないという意味だ。
前述したように、WOGの優先事項は伝道だが、地域開発にも手を伸ばしている。彼らには農業を始めたい土地が3つあり、ジョンの助けに期待している。 (1)家の隣にある1/2エーカー、(2)車で20分ほど離れたところにある購入したばかりの畑。 周囲には他の農場も多く、ヤシの木が岸に立ち並ぶ川もある美しい地域だ。 彼らには農業の経験はあまりない。 有機農法は彼らにとって魅力的に聞こえるが、実際はよく分からないという。マクドナルドは、すぐにでも、すべての藪を刈り取り、堆肥化するようアドバイスしていた! (3)前述の20ヘクタール。正直言って、私は、どうやったらそんなに広大な土地を活用できるのか分からない。アジア学院式の農業は非常に集約的で、小さな圃場から大きな収穫を得ることができるからだ。彼らは果樹園としての利用を考えているようだった。

WOGは1997年に組織として登録されたが、スタートは遅かった。当時、ジェフリーはまだマラウイ放送局で働いていた。 NHKとの共同プロジェクトで日本にも行ったという。 2009年から彼はWOGにフルタイムで貢献するようになり、2010年には、「村の銀行」を始めた。私が目にしてきた村の貯蓄貸付(VSL)と異なるものかどうかはわからないが、ビジネスプランを考えるトレーニングの要素も含まれているようだ。現在、スタッフのドロシーが村の銀行を管理しているが、いくつの村々で働いているのかという私の質問に、彼女は「たくさん!」と答えた。

新しいコミュニティに入ると彼らは「村のアプローチ」と呼んでいる方法で、まず親睦の場を立ち上げる。聖書を学び、祈り、礼拝をするキリスト教の集まりだが、ジェフリーはあまり詳しく説明しなかった。これらのグループから村の銀行を設立する。村の銀行で最も重要なのは信頼を確立することだからだ。ジェフリーはまた、メンバーたちがお金よりも福音を中心に据えるよう気を配っている。2021年に、彼らはサイクロン・フレディのために活動を中断せざるを得なかったが、2023年には再開できるだろう。ジェフリーは一村一品運動に強い関心を持っている。これは日本やタイ(そしておそらく他の地域でも)で行われている(あるいは試みられている)ビジネスの手法で、それぞれの村が独自の製品を生産し、販売するというものだ。興味深いモデルで、成功例も失敗例も聞いたことがあるが、今のところジェフリーの頭の中にあるアイデアとしてしか存在しないので、これ以上は触れない。彼はまた、「トレーディング・センター 」という概念についても言及した。これは市場のようなもので、商品が適正な価格で販売されることを除けば、その意味は同じである。彼は人々のために食料品の価格を抑える方法を考えようとしているのだが、マクドナルドはすぐに、農家も公正な価格を望んでおり、それを必要としていると指摘した。これを聞いて、ジェフリーは考えこんだ。

彼らはアジア学院にスタッフを派遣し、彼らの土地を迅速に開発するために必要な農業研修を受けさせたいと考えている。さらに彼らは、アジア学院のリーダーシップ研修が「エンパワメントからエンパワメントへ」という彼らのアプローチにぴったりだと考えている。
最後におじいちゃんも入って、皆で集合写真を撮った。91年の人生において、彼の目が何をとらえてきたのかについて、私はまだ想像を働かせている。
我々がマラウイ湖畔のマクドナルドの家に戻ったのは、日没後であった。

文:スティーブン・カッティング(卒業生アウトリーチ担当)
旅の同行者:篠田 快(学生募集、採用担当)

シリーズ記事はこちら

Vol.0 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 序章】

Vol.1 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 1-2日目】 

Vol.2 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 3日目】

Vol.3 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 4日目】

Vol.4 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 5日目】

Vol.5 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 6日目】

Vol.6 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 7日目】

Vol.7 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 8日目】

Vol.8 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 9日目】

Vol.9 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 10日目】

Vol.10 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 11日目】

Vol.11 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 12日目】

Vol.12 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 13日目】

Vol.13 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 14日目】

Vol.14 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 15日目】

Vol.15 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 16日目】

Vol.16 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 17日目】<== 今ここ!

Vol.17 【アフリカ 卒業生を訪ねる旅 18日目】To Be Continued …




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