2025年 2月11日 火曜日
バイオウィン
バイオウィンはWSSSのプロジェクトの一つであり、提携する数千の有機農家の産品を加工・販売するために設立された会社だ。ヴァナムーリカとよく似ているが、規模はさらに大きい。社会的企業であるため、農家には正当な取り分が保証されている。それだけでなく、彼らはシステムにおけるパートナーとしてその価値を認められ、尊重されている(この地域の農家に対する通常の扱いとは大違いだ)。バイオウィンが生み出した利益は、600世帯への教育支援という形でコミュニティに還元される。


受付に入ると、副責任者のラジーシュ・マシュー神父に短く挨拶されたが、詳細を説明してくれたのはジョジョだった。ジョジョの仕事は来客対応だ。彼が我々を座らせるなり、すぐに「スピーチ」を始めたからそう理解したのだ。それは数えきれないほどの修正を経て完成されたものだろうが、決して退屈ではなかった。時折、私が冗談を挟もうとして、彼が「ああ、これだからアメリカ人は!」という表情を浮かべた場面は割愛して、その内容を共有しよう。
さあ、始めよう。

WSSSは人々の、特に農家の生活水準を向上させたいと考えている。ワヤナード県の主な作物はコーヒーと胡椒だ。そのためWSSSは、ヨーロッパのバイヤーたちの基準に合わせ、それらを有機栽培する方法を農家に指導している。農家は収穫物をWSSSに売り、WSSSがそれを加工してヨーロッパへ直接出荷する。いわば「心ある仲介者」だ。農家の繁栄を願い、適正で公正な価格を支払っている。提携農家は1万9,400人にのぼる。WSSSは三つの認証を持っている。コミュニティと環境のための「フェアトレード」、製品の質のための「オーガニック」、そして環境のための「レインフォレスト・アライアンス」だ。
ここで私は、ジョークではなく質問を投げかけた。一部のアジア学院卒業生が試みている「PGS(参加型認証制度)」について聞いたことがあるか尋ねたのだ。PGSはフェアトレード認証の代替となり得るもので、外部の認証機関ではなく、バイヤーとの信頼関係に基づき、コミュニティ自身が有機基準を設定し遵守する。ジョジョの答えは、PGSは認証の高額な費用を払えない、あるいは払いたくない場合に使われる、というものだった。その方が生産物の価格は安くなる。認証そのものが営利ビジネスなのだ! 実際にはそれ以上のことがあるはずだが、それを議論する時ではなかった。
この「バイオウィン」と呼ばれる工場はWSSS傘下の登録企業であり、有機農業、加工、マーケティングを担っている。売上の70〜80%はロブスタ種のコーヒーが占める。乾燥したコーヒーチェリーを買い取り、加工してヨーロッパへ販売するのだ。
P.T.ジョンが横から口を出した。1980年代当時、インド政府はすべてのコーヒーを管理していた。農家は政府にしか売れず、輸出できるのも政府だけだったという。
次に香辛料だ。特に胡椒、ターメリック、生姜。これらは互いの風味が混ざらないよう、別の建物で加工される。食品加工には3つの危険があるという。(1)生物学的危険:病原菌のことだ。加熱や殺菌で対処する。(2)物理的危険:ガラス、石、小枝などの混入。これらは特別な洗浄機や磁石などで取り除く。ミャンマーの製茶工場では手作業で、ゆっくりと丁寧にこれを行っていたのを思い出す。彼らはこれらの機械を喉から手が出るほど欲しがるだろう。(3)化学的危険:食品から化学物質を取り除くことのできる加工法や機械は存在しない。対処法はただ一つ、最初から化学物質を入れないことだ。つまり、栽培時に殺虫剤、除草剤、殺菌剤などを使わない。オーガニックのみだ。
工場見学は建物の周りを歩くだけだった。衛生上の理由、あるいは機密保持のためか、中に入って詳細を見ることはできなかった。だが、開いたドアの隙間から、巨大な機械がいくつか見えた。実に見事な事業だ。ここやヴァナムーリカは、多くのアジア学院卒業生が抱く夢の形だ。農家と協力して高付加価値の作物を育て、自前の加工施設を運営し、安定したバイヤーを持つ。バイヤーは海外である必要はない、国内でも十分だ。しかし、これらすべての要素を整えるのは容易ではない。台無しにする要因は無数にあり、その最たるものは「欲深さ」だろう。卒業生アウトリーチ・コーディネーターとしての私の仕事は、卒業生同士をつなぎ、互いに学び、アイデアを共有できるようにすることだ。だから、これらの場所については必ず卒業生たちに伝えたいと思う。

P.T.ジョンの話
前述の通り、P.T.ジョンはかなりの話し好きだ。彼から聞いた物語や様々な事実を、順不同でいくつか記しておく。特にゾウの話は興味深かった。
ケララ州政府は共産主義だ。赤と金の「鎌と槌」の旗の脇を通り過ぎる際、彼はそう指摘した。驚いた!
ナガランド州は、インドで唯一、人々(部族のコミュニティ)が土地を所有している州だという。他のすべての州では、土地の名義は個人であっても、真の所有者はインド政府である。軽く調べてみたところ、ある程度は事実であり、そうでない部分もあるようだ。いわゆる「ある種 (kind of)」というケースのひとつだろう。これに私が注目したのは、ナガランドには50人以上のアジア学院の卒業生がいるからだ。世界でも、誰も耳にしたことがないような、美しく神秘的な地域だ。いつか皆さんをそこへ案内するかもしれない。
(シビが言っていたように)野生動物の襲撃が増えている。新聞ではほぼ毎日報じられている。森が多様な自然林ではなく、単一栽培のプランテーションになってしまい、十分な食べ物がないからだ。
P.T.ジョンの農場もしばしばゾウに襲われたため、彼は柵を作った。だが普通の柵ではない。農家の予算で作れる柵でゾウを防げるものはほとんどない。彼らは巨大で賢いからだ。そこで彼は「ミツバチの柵」を作った。吊るした蜂の巣を一定の間隔で配置し、それらをワイヤーでつないだのだ。ゾウがワイヤーに触れればハチを刺激し、鼻を刺される。それが彼の計算だったが、結果は少し違った。どういうわけか、ゾウはその危険を察知し、近寄りさえしなくなったのだ。彼はこのユニークなアイデアを、地方政府に提案し、農家にとって良い選択肢でありハチミツの収入にもなると話した。だが、なぜか役人たちの反応は芳しくなかったという。

ナイスレストランでの昼食
昼食に我々が向かったのは…「ナイスレストラン」だ。きっと街で一番ナイスなんだろう。今日の料理はこれまでで最も豪華で、皆がご馳走してくれた。私は観察し質問することで、個々の味を順番に楽しめるカレーの食べ方を学びつつある。カレー通への道を歩んでいるようだ。ところで、ロイ・デイビッド(2003年アジア学院卒業生)がバイオウィンで合流し、昼食を共にした。彼が私をカルナータカ州へ連れて行ってくれることになっている。そこで数日間、彼の生涯の仕事について学び、この記録をさらに刺激的な物語で埋めることになる。彼もまた二つの名前を使っているが、時々、ただ「ロイ」と名乗る。

ヒューム・センター
この日最後の訪問先は、緑豊かな美しい丘陵地帯、カルペッタにあるヒューム・センターだ。道中、道路沿いで石垣を築く数十人の作業員とすれ違った。インドでは機械よりも人間が、依然として多くの重労働を担っている。雇用を創出することが優先されているのだろう。

到着すると、責任者のヴィシュヌダスと、ジャーナリストとして活動を始めた妻のスーマが温かく迎えてくれた。事務所へ案内される際、壁に掲げられた数々の名言に目を奪われた。「正しい問いを投げかければ、自然は彼女の秘密に続く扉を開くだろう。」というものが、気に入った。二人ともアディヴァージとの活動を通じてナランと知り合い、主要な部族開発プログラムを一年かけて分析し、プロジェクトの進捗をコミュニティ自身の声から学んできた。
席に着くとすぐに、スーマが精力的にこの場所について語り始めた。正式名称は「ヒューム生態学・野生生物学センター」。インドでこれらの研究に生涯を捧げたイギリスの有名な生物学者であり鳥類学者、アラン・オクタヴィアン・ヒューム氏にちなんで名付けられた。もし彼が生きていれば195歳だ。この豆知識は彼らのFacebookから拝借した。
スーマが主な語り手、ヴィシュヌダスがサポート役となり、三つのプログラムについて説明してくれた。一つ目は気候変動だ。ワヤナード県は標高が高いため、作物や香辛料は微気候の影響を受けやすく、特にカルダモンはその影響が大きい。そのため「気候脆弱地区」と呼ばれている。センターはコミュニティと協力し、気候変動に対する科学的根拠に基づいた解決策を作っている。例えば、より耐暑性の高い稲の品種を導入し、気温上昇に適応しようとしている。


ゲリラ豪雨のマッピング
近年、ワヤナード県では以前には見られなかったような豪雨に見舞われている。2024年には大規模な土砂崩れが発生し、いのちや住居が失われた。2018年からヒューム・センターは、地区全域の降雨量を記録し、「集中豪雨」の特定エリアをマッピングしている。各地のボランティアの協力を得て、洪水や土砂崩れの危険地帯を示す詳細な地図を作成した。この地図は政府と共有され、早期警戒システムの構築に役立てられている。他の地区もこの取り組みを模倣し始めたが、雨量計はまだまだ不足している。


トラと人間
二つ目のプログラムは、人間と野生動物の対立問題だ。お分かりのように、この話については、新たな相手に話を聞く毎に、この問題の背景が少しずつ明らかになってくる。スーマはこれを、動物保護の「次なる世代の問題」と表現した。保護が成功すれば野生動物が増える。ここワヤナード県では、トラの個体数が16頭から18頭に増えた。この大型のネコ科動物にとって、この増加は極めて大きい。今や、人々はいかにして彼らと共存するかを考えねばならない。トラの最も近くで暮らすアディヴァージにとっては、何の問題もない。襲撃も起きない。彼らは警告のサインを知っている。トラが近くにいるかどうかをつねに察知しており、トラもまた同様だ。100m先から互いの匂いを感じ取れるのだ。しかし、村人や農家はそれを知らない。老いたトラや縄張り争いに敗れたトラは、森の境界まで下りてきて家畜を襲い、時には人間も襲う。今や「トラを守る」ことを望まない人々もいる。
問題の根源は、保護の成功が単にトラを守ることだけでなく、その生息地を守ることでもあるという点にある。現在の森はもはや本当の森ではなく、チークやアカシア、ユーカリばかりが育つプランテーションだ。そこにはシカなどの動物の餌がない。食べるものがなくなったトラは、人間や家畜のいる場所へと迷い込んでくる。政府の森林局やプランテーションの所有者は森を守っていると主張するが、彼らの木が生み出しているのは「金」だけだ。
エコ・シアターと気候訓練生
最後のプログラム、そして最も私が惹きつけられたのが教育プログラムだ。彼らは非常に独創的な手法をとっている。例えば、自然保護を学ぶ手段としての「エコ・シアター」だ。子供たちに、自分の体が動物の体であると想像させる。どんな見た目で、何を感じ、どう動くのか。
スーマは、子どもたちが「生きた土壌」について学ぶ四日間のプログラム「土は命(Soil is Life)」について語った。最初、子供たちは土を「ただの泥」だと思っている。だが最後には、足元に広がるあらゆる生命や微生物の絵を描くようになる。子どもたちには、「君が植物の根だとしたら、何が見える?」といった問いが投げかけられる。毎日、生徒たちは活動や観察のために森へ行き、戻ってきては各チームの大きなバナー(横断幕)に新しい発見を描き加える。最終的には、土の物語が描かれるのだ。
小学六年生から高校三年生を対象に、問題を体系的かつ科学的に分析することを、有意義な方法で教えている。例えば、気候変動について知っていることを尋ねると、子どもたちは皆同じ答えを返す。「氷河が溶けている」「海面が上昇している」。そこで彼らに雨量計を渡し、雨を計測し観察する方法を教え、それが自分たちの経験したことのある土砂崩れとどう関係しているかを考えさせる。次に、子どもたち自身に問いを立てさせ、実験を開発させ、その結果を創造的・芸術的な方法で共有させるのだ。
このプログラムに参加する子どもたちは「気候訓練生」と呼ばれる。彼らは丸一年かけてプロジェクトに取り組み、成果発表のために情報を集める。各学校から10人が参加し、中には異なる言語を話すアディヴァージの子どもたちも含まれる。アディヴァージの子は静かで控えめな傾向があるが、ある日、川でカニを探すタスクを与えられた時のことだ。都市部の子が全く見つけられない中、アディバシの子はどこを探すべきか正確に知っており、先頭に立って皆を最高のスポットへ案内したという。
ヒューム・センターの活動は、聞けば聞くほど素晴らしいものばかりだった。彼らの情熱は伝染する。彼らの授業に参加したり、子どもたちの発表を見たりしたかった。もちろん、私もアジア学院について話し、ドキュメンタリーを見せた。彼女たちはすぐに私たちの価値観の中に、共通点を見出した。あの「生きた土」の話を思い出してほしい。刺激的な午後だった。このつながりは、ぜひ維持していきたい。
とても美味しい
帰り道、お茶をするために寄り道をした。ロイ・デイビッドが、クレープのような方法で作られる、焼きたての「マサラ・ドーサ」を勧めてくれた。ドーサは薄いパンケーキのような料理で、「マサラ」がつくと中にとジャガイモが入る。ロイ・デイビッドは日本語をよく覚えていて、機会があればすぐに使いたがる。それで彼はこう断言した。「Dosa is oishi while masala dosa is totemo oishi(ドーサも美味しいが、マサラ・ドーサはとても美味しい)」。言語遊びが好きなのは、どうやら私だけではない。



