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戦後80年の節目を迎えた2025年、アジア学院はここに改めて平和への決意を表明します。
戦争体験者や被爆者が年々少なくなっていく中、今を生きる者にとって戦争と核兵器の悲惨さを次世代に伝える責任はますます大きなものとなっています。2024年、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)がノーベル平和賞を受賞したことは、そのことの重要性を象徴しています。また、ガザやウクライナをはじめとし、アジア学院の学生や卒業生の母国を含む世界各地で暴力と対立が続いているただ中にあって、和解と平和文化を築くことは、私たちに与えられた緊急かつ重要な使命と感じています。
アジア学院がこれまで進めてきた、自然・隣人・自分自身・神との和解の追求、またそこから生まれた「土からの平和」という根源的な希望と願いをさらに力強く推し進めるために、以下の平和宣言を作り上げました。
歴史の過ちを忘れず、平和を脅かすあらゆる力に声をあげ続ける
戦後80年の時の流れは、過去を忘れてよい免罪符ではありません。記憶を継承し、歴史の痛みに真摯に向き合うことこそが、平和を築く基盤であると私たちは信じます。日本の侵略戦争と植民地支配は、アジアの人々に深い苦しみと破壊をもたらしました。数えきれない命が奪われ、多くの共同体が傷つきました。日本の教会もまた、戦争に強く反対する声をあげず、時にそれを正当化する役割を果たしたことを、私たちは謙虚に認め、深く悔い、二度と同じ過ちを繰り返さないことを誓います。
私たちは広島と長崎の惨禍を思い起こし、核兵器の廃絶を強く訴えます。核抑止力に基づく安全保障の論理は、真の平和をもたらすものではありません。すべてのいのちを脅かす核兵器に対し、私たちは明確に「ノー」を宣言します。
自由と正義、差別の克服に根ざした平和な社会の構築
今日、世界は戦争と暴力の連鎖、核兵器の脅威、気候変動、食料不安、精神的断絶といった地球規模の危機に直面しています。しかし、私たちは自由と正義、差別の克服に根ざした社会を創り出す可能性を信じています。
身体的・社会的属性に基づく差別を乗り越え、軍事力や武力による支配ではなく、調和・共生・協力が基盤となる世界を目指します。私たちは、平和は家庭から始まると考え、まず家庭において平和の器となることを重んじます。自らの内に、家庭に、地域社会全体に平和を築き、それを通して世界の平和と正義に取り組むのです。
政治的排除、ジェンダーに基づく暴力、軍事化の圧力に直面しても、私たちは地域の現場で連帯の声をあげ続けます。平和構築、紛争解決、仲裁、非暴力コミュニケーションを推進し、人々が平和を人生の最優先事項に据えるよう働きかけます。また、新しい技術も平和のために用い、情報の自由で公正な流れを確保し、それを地域と個人レベルでの平和に役立てていきます。
地域社会に仕えるリーダーを育成し、共に平和の器となる
アジア学院は草の根のリーダーの育成を通じて、不平等や不正義、脆弱な地域社会の課題に取り組むことを誓います。土地や食料の権利、地域主導の発展を平和構築の柱とし、経済的不安定や気候変動の中で地域のレジリエンスや災害への備えを育みます。また、すべての人に全人的な教育の機会を提供し、身体的・精神的・霊的に健全な社会づくりに貢献します。さらに、アジア学院の価値観を世界的ネットワークを通じて共有することで、平和への貢献を広げます。
土からの平和
土を耕し、食べものをつくり、共に喜びをもって食卓を囲む営みは、すべてのいのちが互いに支え合って生きていることを教えてくれます。私たちは、自然生態系の一部として生かされていることを強く自覚し、すべての被造物と共に生きることを強く望みます。
自然を搾取し破壊する自己中心的なあり方は、いのちを脅かし、種の絶滅さえ招きます。戦争もまたいのちの尊厳を無視した自己中心的なあり方が原因です。自然破壊と戦争は同じ根を持つのです。だからこそ平和を実現する人は、自然、隣人、自分自身、そして神と和解することが必要不可欠です。
平和は自らの内から始まり、食卓に食べものがあるとき、地域社会において平和と幸福が可能なものとなります。種子の主権を守り、土を壊さずに食料を育むことは、平和と安全保障の根幹です。自然と調和した営みこそ、平和を育む確かな基盤を築きます。
アジア学院は、この「土からの平和」の種を蒔き、広げていくことを目指します。
結び
平和は与えられるものではなく、日々の選択と実践を通して築かれるものです。私たちは建学の理念に導かれ、土から、共同体から、心の内から平和を創り出す道を歩み続けます。戦後80年という節目に、過去を悔い改め、未来に希望をつなぐために、ここに平和の誓いを新たにいたします。