皆さんは、アジア学院の学生たちがどのような過程を経て、日本に来るかご存知ですか?
アジア学院では現在、キャンペーンの一環として、学生たちのアジア学院までの道のりを追うシリーズを、4回に分けて連載しています。
シリーズのラストは、アジア学院で学生募集を担当する、スタッフの篠田 快さんです。
アジア学院に至るまでの学生たちの道のりも大冒険ですが、選考から航空券の手配までを支えるアジア学院側のプロセスも、汗と涙にまみれていました。
【カイ(アジア学院 学生募集担当スタッフ)の場合】
2020年に大学を一年間休学して、アジア学院のボランティアを経験した篠田 快(カイ)が、当時の学生選考スタッフから直々にオファーを受け、就職したのは2022年のことだ。
学生の選考期間には、午前中はマヤ族、お昼ご飯を食べたらマサイ族、夕飯前にナガ族というように、多種多様な応募者とオンライン面接を行う。こうして彼ら / 彼女らの相対する課題を、当事者としてどう解決したいのかが聞けるなど、日々学びに富んだこの仕事が好きだという。
入職から4度の選考に携わってきた彼だが、印象深かった学生の渡航エピソードを聞くと、よくもまあそんな数年のうちに、と思うようなすごい話がどんどん出てきた。
例えば、昨年のマラウイからの学生が遅れて来日した理由は、政府が「サイバーハック」されたから。ちょうど政権交代したばかりで、与党に不満を持った野党の仕業で、重要なデータを消すと脅し、金を要求したという。何とか新政府は金を払わずに解決したが、ようやく発行されたパスポートの生年月日が間違っていて、さらなる足止めを食らうことになった。
別の例は、南米・グアテマラからの来日だ。ポピュラーなルートはアメリカ経由だが、渡航直前になり、不法滞在者が多い開発途上国の者は、経由ビザの発行が難しく、半年かかると聞いて断念。メキシコからの直行便はロシアの領空を飛行するため欠航しており断念(ウクライナとの戦争の影響)。結局、メキシコから東欧を経由し、アジアに入る便を選んだという。
今年、カイを悩ませていたのは、コンゴ民主共和国出身の新入生のビザ申請手続きだった。約30年にわたって紛争が続いてきたコンゴでは、昨月から反政府武装勢力「M23」が攻勢を強め、さらに紛争が激化している。そのため、書類の申請をしようにも危険すぎて、国内を移動できないという。そんな彼がカイに提示したのは、一度、飛行機でウガンダに行き、エチオピアを経由して、そこからコンゴの首都に降り立つ方法だった(3月27日、無事に来日を果たした!)。
このように、しばしば起きる、我々の想像を超える困難を一つ一つ受け止め、最善の道を探すのが学生選考課のスタッフの仕事であり、それをすべて乗り越えて、ついに空港で、顔と顔を合わせる瞬間は何物にも代えがたいだろう。
こうまでして、農村地域で働くコミュニティリーダーたちをアジア学院に招く意義について、カイはこう語る。
「当然のことで、わざわざ明言する必要もないと思う方もいるかもしれません。でも、社会問題の解決に向けた最も大事なステップは、そもそもそれが問題だと気が付くことだと思います。さらに注意すべき点は、生涯を問題だらけの中で過ごすと、それらに気が付きにくくなることです。
…私たちは、学生のことを、スタッフやボランティアも含め、互いに教え合う者という意味を込めて、『パティシパント(参加者)』と呼びます。アジア学院では互いに似た境遇の者、まったく違う背景の者たちと学び、教え合うことで、改めて問題に気づかされます。その上で、次の一手を共に考える場所です。私は、そんな卒業生たちが帰国した先に待つ変化に、いつも期待を膨らませています。」
大変な仕事にも前向きに取り組めるのは、その先に見える未来を信じているからだろう。
まだ見ぬ、世界の農村に生きるリーダーたちとの出会いを求めて、カイの挑戦はこれからも続く。

ザンビアの空港にて 久しぶりの再会を果たした卒業生と共に

学生の来日をスムーズにするために
欠かせない仕事


無事に会えて、ほっとひと安心

シリーズ記事はこちら
【ご存知ですか?農村コミュニティリーダーたちのグレイト・ジャーニー】①
【ご存知ですか?農村コミュニティリーダーたちのグレイト・ジャーニー】②
【ご存知ですか?農村コミュニティリーダーたちのグレイト・ジャーニー】③
【ご存知ですか?農村コミュニティリーダーたちのグレイト・ジャーニー】④ ←今ここ