
農村とは?
アジア「農村」指導者養成専門学校(英語名はAsian Rural Institute=「アジア農村学院」)という校名と、そこで行われているのが「農村」指導者の養成ということから、アジア学院とは世界の農村地域とそこに住む人々に焦点を当て貢献している学校、ということに何の間違いもない。ところが面白いことに、アジア学院内の会話で頻繁に耳にするのが、「農村とは何か?」という問いだ。毎年学生たちは、「農村地域研修旅行」の一環として東北地方各地で2週間を過ごす。有機農家を訪ね、ホームステイをし、農場でも一緒に作業に携わる。そこで学生たちが体験するのは、これら農家と農村社会が環境保全に心を砕きながら土に生きることを通して、何と質素で敬意に値する充足の毎日を送っていることかということだ。忘れられない印象として残るという。しかし研修旅行の終わりには、自分たちが視察訪問した先は「農村ではない」と多くの学生が言う。舗装された道路、電気、立派な住まい、学校に行けること⸺これらの事実は、自分たちのこれまでの人生で遭遇したことのない農村の姿だ、と言うのだ。彼らにとってそれはショックであり、未来へのインスピレーションともなるものだ。ウガンダ出身のモーゼス・ブスルワは断言する、「日本に農村などありません。」

農村=何もない
ではアジア学院卒業生たちはどう見ているか。いつものごとく意見は分かれる。しかしこの話を始めてみると、「農村地域に欠けている物」に言及することから始まることが多い。スティーブン・ヴァン・ビックは言う、「ミャンマーのことで言えば、農村、そこには何もないということですかね。交通手段なし、受けられる教育レベルも低い。保健施設もなければ通信手段もない。私の地域で言えば、山々に囲まれたところなんですが、安全な水が近くで手に入ることなんてまずありません。だからみんな、川まで下りて行くとか湧水を探し、そこから運んでくるのです。」ホセマリー・キジト神父はこう断言する。「アフリカの農村に住む人々、ここウガンダでは、それは貧しい人、ということです。農村と貧困、それは同義語⸺分かります?」

農村=農業
こうした話をしていると、農村の人々の生活ぶりに話題が移ることが時々ある。ほとんど例外なく農業に根差す生活だ。「主な仕事は、農業」とカメルーンのオスカー・クウェチェは言う。「農業以外の仕事をやっている人は誰もいないし、ほとんどの人たちは農業所得によって、例えば子どもを学校に通わせています。生活のためのすべてを農業に頼っているのです。」サラ・ヌーは東北インドの村の生活をこう表現する。「陽が昇る前にはすでに畑。暗くなりかけたころようやく家に帰ってきます。

農村生活の価値
やがて議論は別の方向、今度はポジティブな面へと向かっていく。アジア学院ではよく、農村生活の価値、ということが語られる。共に働きながら、豊かな実りの時も物不足の逆境にある時も、みんなで互いに分かち合って生きてきた長い伝統がそこにはある、と。さらには、世の人の食べものを作っているのは農のの人ではないか、生命を支える食べもの以上に価値のあるものなどありえようか、とも。では、そうした「何もない」という厳しい現実条件の下に生まれ、生きている人々にしてみたら、そこに何かの価値などあるのだろうか、と。ジュード・フォンサが語る農村はこうだ。「恵まれていないところ、とても貧しい人々が住んでいるところ。しかしそこでは、ここが私の居場所、という帰属意識が皆だれにもあり、痛みを共に感じるところです。」コリンズ・イェニカは次のように説く。「カメルーンの例をお話します。農村コミュニティでは家に食べものがないかもしれない人々がいます。でも絶対に飢えることはありません。連帯の精神、分かち合いのスピリットがあるのです。カメルーンの農村でとても、とても大切にされているものです。コミュニティの中で分かち合うこと、特に食べものの分かち合いは非常に重要なことと考えられています。たとえば、そうですね、今ここで誰かが亡くなったとします。コミュニティの全部が慰めに来てくれるでしょう。あるいは、火事とか事故など何か災いごとが起こった時には、被害に遭った人をそうした状況から助け出すため、全コミュニティがお金を出し合ったり力を貸してくれるでしょう。これが、農村コミュニティの私たちが本当に拠り所としている価値です。そういったものが私たちを結びつけ、真に農村たらしめているのです。


農村とは?
スティーブン・カッティング 著
アジア学院 卒業生アウトリーチ課
この記事はもともと、アジア学院の卒業生たちの人生と、研修後のコミュニティにおける活動を描いた書籍、『農村指導者たち(Rural Leaders)』に掲載されたものだ。本書は、ベブ・アブマとスティーブン・カッティングが行った大規模なインパクト調査の締めくくりとして執筆された。この調査では、11カ国に及ぶ225名の卒業生への現地インタビューが実施された。なお、本書は現在もアジア学院で購入可能だ。

